刀剣講座「銘や刃紋を写し取る押型作り」
こんにちは、新江戸川公園です。
9月18日の刀剣講座を引き続きご報告いたします。
午後の部は「日本刀の銘や刃紋を写し取って、自分だけの押型をつくってみよう」です。
押型とは、刀剣の上に和紙を押し当てて、茎(なかご)の銘を墨で写し取ったり、刃紋などを書き写すことです。
刀剣は、強固な鉄(鋼)で作られているので保存性が高いように思えますが、水による錆はもとより火にも大変弱く、本能寺の変や大坂夏の陣、明暦の大火などで焼けてしまった名刀が数多くあります。
そのため、押型は古くから受け継がれている名刀の情報を正確に残す、大切な役割を果たしています。
それでは高性能な写真器材がある現代には、もはや押型が不要かといえばそうではないようです。
一般に刀剣の地に現れる肌目や地刃の働き、沸えや匂いなどの全てを写真の画像に写し取ることは技術的に難しいそうですが、押型であれば極めて正確に記録することができます。
特に、初心者には区別がつきにくいといわれる、刃紋と地の境目に現れる「沸え」(←夜空にきらきらと輝く星のような、肉眼で確認出来る粒子)と「匂い」(←天の川のようにぼうっと霞んで、肉眼で粒子が確認出来ない)については、根気はいりますが、それらを精密に写し取ることができるそうです。
講義は日本最古の刀剣書「正和銘尽」による、押型のルーツ解説から始まりました。
大学の授業に紛れ込んだかのような専門的な解説ののちに、お待ちかねの押型実習です。
本日は「刃紋取り」と「茎(なかご)取り」の2つの作業です。
まずは「刃紋取り」から。
刃紋取りに使われる和紙は、大変緻密で貴重なものだそうです。
用意された名刀の銘と刃紋が描かれた教材を、各自お好みで選びます。
講師の阿部先生から、一連の手順をお教えいただき……
さっそく作業にかかります。
この作業に没頭すると、大変心が落ち着くという方もいらっしゃいます。
時間内では到底完成に至りませんので、あとはご自宅でのお楽しみです。
こちらは、和室で行われている「茎(なかご)取り」です。
和紙を茎に固定して、専用の炭を慎重に当てながら、銘を写し取ります。
丸い銀色のものは、阿部先生が100均で見つけてこられたという、磁石です。
この磁石の良いところは、厚紙のパッケージに入れたまま使えるので、和紙や刀を痛めることがないのだそうです。
参加者が最も苦労されているのは、和紙がズレてしまうことのようで、講師からは、墨を動かす方向を一定にするなどのアドバイスをいただきました。
完成です!
午前の刀剣鑑賞では、実物を手に取って光にかざしながら刀剣の美しさを鑑賞しましたが、この押型では、地肌に現れる様々な表情をじっくりと観察しながら自分の手で描き写し、それが自分のものになるという、贅沢な鑑賞方法ともいえます。
次回は、2日目の様子をご報告いたします。
それではまた!